ニューヨークを拠点に活動する富裕なイギリス人貿易商・ローリー（ジュード・ロウ）は、さらなる成功を目指してロンドンへの転居を決意します。でも、彼の過度な野心のせいで彼の事業は思うようにならず、破綻は避けられなくなってしまいます。そのため、彼のアメリカ人の妻アリソン（キャリー・クーン）との関係や、多感な時期の子供たちとの間にも摩擦が生じてしまいます。
1986年、資本主義の盛んな時代の前夜、ブラックマンデーの一年前を背景として、この映画はローリーの止まらない欲望とその結末を深く描いています。また、イギリスとアメリカの文化や価値観の違いも織り交ぜられていて、まるで濃密な舞台劇のようです。
そう感じるのは、映画の舞台が荘厳で古風な屋敷だからかもしれません。
ローリーたちが移り住んだ、古めかしい屋敷は、複雑な構造を持つ幽霊屋敷のような存在で、各部屋や廊下、階段に漂う独特の雰囲気が、映画の緊迫感を一層高めています。
さらに、現実と幻想が交錯するようなシーンや、事態が次第に悪化する兆候を示すショットが効果的に配置されていて、観る者を深い映画の世界に引き込んでいきます。
ジュード・ロウを始めとするキャストの演技は、この映画の大きな魅力の一つです。彼らの熟練した演技は一見の価値アリです。
ただ、オカルト的な要素や過度で刺激的な演出を排除し、リアルな描写に徹しているので、物語自体は比較的シンプルで地味と感じるかもしれません。
それにもかかわらず、ジュード・ロウはじめ演技巧者のおかげで、観る人によって深い共感や感情移入が異なるだろう作品になっています。
