「潜水艦映画にハズレなし!」とよく言われますが、この映画「潜水艦クルスクの生存者たち」も非常に、非常に良い作品です。
ただし爽快感や安堵感はありません。残念ですが・・・
簡単なあらすじから。
2000年8月、ロシアの原子力潜水艦クルスクは合同演習中の艦内で魚雷が爆発して大破、海底に沈み動けなくなります。司令官ミハイルら23人はわずかな酸素で救助を待ちますが、ロシア政府は潜水艦の軍事機密を守ることを優先して家族にも正確な情報を伝えず、イギリス海軍のデイビッド准将ら諸外国からの支援も拒絶します。
極限状況に陥り緊迫感が怒涛のように押し寄せる艦内と対応に奔走する人たち、船員家族の不安をバランスよく配置した実話に基づく映画です。
極限のサバイバル劇と乗組員の無事を祈る家族のドラマを融合させ、乗組員仲間の強固な結束や夫婦・親子愛は描いていて手堅く職人仕事をこなしています。
希望は捨てないけど、救助作戦が進まずに死への恐怖が大きくなる状況に、観ている方も息苦しさを感じてくるようになります。
それと同時に、国の権威や体制堅持を最重視するロシア政府の決断にひたすらあきれ返りました。この作品が遺作になってしまった名優マックス・フォン・シドーが演じるロシアの海軍大将は、国家の威信を優先させて平然とウソをつきます。映画(芝居)とはいえ、激おこぷんぷん丸になりながらの視聴でした。
ちなみに、この映画「潜水艦クルスクの生存者たち」ではロシア政府をこのように「うそつきの悪」として描くので、ロシア国防省はこの映画の撮影協力を拒否したそうです。
ウクライナ侵攻に際しても、ロシア軍は”演習”だと欺いて(うそをついて)訓練をしていない新兵をウクライナ侵攻の最前線に送り込みました。訓練を受けていないわけですから、多くの新兵が命を落としました。
ロシア国内でこの事実がどのように報道されているかはわかりません。でも、世界ではロシア(厳密にはロシア政府)は”うそつき”であり信用できないというイメージが確立しました。
ウクライナ報道をみるたびに怒りがこみ上げてきますが、この映画を視聴して怒りのボルテージがさらに上がりました。同時に観終わった後、序盤での家族との一コマや友人の結婚式のシーンがフラッシュバックしてきて、ものすごく切なくなりました。
忘れられない映画がまた一つ増えました。